PROFILE
内科医、文筆家。富山県生まれ。 1987年に弘前大学医学部を卒業後、都内病院にて2年間の内科研修を積む。1997年、東京大学大学院医学系研究科博士課程を修了し、医学博士号を取得。東京医科歯科大学難治疾患研究所などを経て、1999年に東京都狛江市に「こまえクリニック」を開院。2000年、不妊に悩む人々のための相談窓口「不妊ルーム」を開設し、心と身体の両面からサポートする独自のアプローチを続けている。
現在の仕事についた経緯
自身の不妊治療経験が原点となっています。産婦人科の待合室で、妊婦さんと不妊に悩む人々が混在する空間に強烈な違和感を覚えました。「幸せと悲しみが混在し、不妊患者を包む空気はよどんで動かない」。その中で、治療のプレッシャーが逆に視野を狭め、状態を悪化させる「不妊治療不妊」という状況があるのではないかと考えるに至りました。
その思いからクリニックのホームページに「不妊でお悩みの方へ」というページを設けたところ、一人の女性から「人工授精まで受けたが、もう一度受ける勇気が出ない」と連絡が入りました。この出会いをきっかけに、相談相手としての立場から一歩踏み出し、積極的な治療へと携わることを決意しました。そこから看護師や医師にアドバイスを仰ぎながら、カウンセリングサイト「不妊ルーム」を立ち上げました。
以来、治療に疲れた方、不妊治療に踏み出せない方の「ベースキャンプ」として、迷宮から抜け出し次の一歩を踏み出すためのサポートを行っています。
仕事へのこだわり
主流の不妊治療が、卵巣に鞭を打つ「北風」のアプローチだとすれば、私が目指すのは、身体の内側からコンディションを整え、卵巣を大切に育む「太陽」のアプローチである。
その核となるのが、「基礎体温表」「婦人体温計」「排卵日検査薬」の三種の神器と、漢方薬の積極的な活用です。特にオリジナルの基礎体温表は、夫婦と卵巣の状態を「見える化」し、的確なタイミング指導を可能にします。東洋医学の視点から体の「ゆがみ」を正す漢方薬と組み合わせることで、多くのケースで自然妊娠へと導いてきました。
さらに近年では、従来のやり方だけではカバーしきれないケースに対応するため、「卵巣セラピー」を提唱しています。
1.亜鉛と銅のバランス
2.甲状腺ホルモン(元気の源ホルモン)
3.ビタミンD
これら3つの要素に着目し、卵子の質を高めるためのコンディショニングを行います。内科医としての知見を活かし、身体全体の環境を整えることで妊娠力を高めるのが、私のこだわりです。
また、患者の精神的負担を軽減するため、内診台を使わず腹部超音波検査で卵胞チェックを行うなど、常に患者に寄り添う姿勢を貫いています。
若者へのメッセージ
今の若い世代の方々にお伝えしたいのは、子どもを持つということは、ご自身のライフサイクルにおける非常に重要な活動だということです。
歴史を振り返っても、人々が子どもを安心して産み育てる社会の根底には、戦争や災害がないといった「安全」、そして将来への「安心」があります。現代の不妊治療は、時に過度なストレスや経済的負担となり、その「安心」を揺るがしかねません。
不妊治療はステップアップだけが全てではなく、時には立ち止まったり、ステップダウンしたりすることも大切です。まずは自分たちの身体の力を信じ、その力を最大限に引き出す方法があることを知ってほしいと思います。
私たちのクリニックはいつでも気軽に立ち寄って相談できる場所を目指していますので、少しでも悩みや不安があれば、一人で抱え込まずにぜひ声をかけてください。