パンケーキ症候群について
「パンケーキ症候群」とはパンケーキや、お好み焼きなどを食べた後にアレルギー症状が出る病気です。正式には「経口ダニ・アナフィラキシー」と呼ばれます。
小麦のアレルギーというわけではなく、パンケーキを作るときに使用する粉の中に侵入した「ダニ」が原因です。
寝具などに住み着いているものと同じ種類のダニが、ホットケーキミックスなどの「ミックス粉」の袋の中にいつの間にか忍び込みます。粉類を一度で使い切れなかった時に、しっかり密閉できていないとダニが入りこみ、そこで繁殖します。
ダニが入った粉で調理したものを食べ、ダニアレルギーの症状が引き起こされた状態がパンケーキ症候群です。加熱しても防ぐことはできません。加熱調理でダニ自体は死にますが、死骸の中にアレルギーの原因物質が残っているので、それを食べたら症状が出てしまうからです。
一度に大量のダニアレルゲンを口から摂取すると、急性のアレルギー反応である「アナフィラキシー」を引き起こすことが多いといいます。具体的には、じんましん・浮腫(むくみ)・腹痛・下痢に、呼吸困難・意識障害と、重症化すると命の危険もあります。ほとんどが食べた後30分以内に発症します。こういった症状がでたら、すぐに医療機関にご相談ください。開封後に常温で6か月以上たった市販のお好み焼き粉を使ったお好み焼きをたべて、アナフィラキシー症状をおこした方もいます。ダニは温暖湿潤な環境を好み「気温25℃以上」「湿度60%以上」でよく繁殖します。まさに6月~7月にかけての時期は注意が必要です。
ミックス粉はキッチンの引き出しや、戸棚に入れっぱなしになっていることが多いのではないでしょうか。ジップつきの袋や密閉容器に入れたから大丈夫と思わないようにご注意ください。ダニは体長0.3~0.5ミリと非常に小さく、わずかな隙間でも入りこみます。実際に家庭で保存されていた粉製品を検査したところ、袋を折り曲げてゴムやクリップでとめたものや、密閉容器に保存されていたものからもダニは検出されたという報告もあります。これを打開するためには、まずしっかり密封したうえで、冷蔵庫で保存することをお勧めします。さらになるべく早く使い切ることも重要です。可能であれば開けたら1か月以内には使い切るようにしましょう。
〈クリニック情報〉
医療法人社団博雅会 草ヶ谷医院
院長 草ヶ谷英樹
https://kusagaya-clinic.com/
2003年に大学を卒業後、内科の中でもがん、アレルギー、感染症、自己免疫疾患、環境関連疾患など、非常に多彩な病気を診る必要がある呼吸器内科に強くひかれ、専門的に勉強を始めました。その後大学院で気道免疫の研究をすすめ学位を取得する中で、免疫反応やアレルギー疾患に興味をもち、現在はとくに気管支喘息やアレルギーなどを専門的に開業医として働いています。
小さい頃から甘やかされて育ち大きな挫折も無かったため、飄々と人生を渡っていく予定だったのが、32歳時に精巣癌で手術や体重が60kgから40kgまで減るような抗がん剤治療を受けた経験、37歳時に原因不明の顎関節症を患い、顎関節形成術,その後約半年に渡るリハビリテーションを行った経験を経て、医療は患者心理にもっと寄り添うべきだと感じるようになりました。
現在は患者さんも、医療者も幸せになるクリニックづくりを目指しています。