Healthcare journal

2024.06.25 Tue
医療法人社団博雅会 草ヶ谷医院 https://kusagaya-clinic.com/

Q.夏型過敏性肺臓炎って、そもそも何なの?

夏型過敏性肺臓炎は主に梅雨から夏にかけて発生するアレルギー性肺炎の一種です。この病気は主にカビを吸い込むことによって肺が炎症を起こし、せきや息切れ、発熱などの症状が出てきます。特に家の中にカビが繁殖しやすい5月から10月にかけてよくみられます。気密性の高い住宅が増えている最近では、さらに早い時期から症状が現れることもあります。なんだか風邪のような咳が続くけど、なかなか良くならないときには、ちょっと意識してみたくなる病気です。

Q.カビって・・・いったいどこのカビ?

夏型過敏性肺臓炎の主な原因は、家の中に生えるカビ、特に「トリコスポロン」という種類のカビです。このカビは湿気や水が多い場所に繁殖しやすく、エアコン、浴室、洗面所、キッチンなどに見られます。日本は高温多湿のため、普段は気にならない場所も、この時期は気づくとカビが生えていたなんていうことが少なくありません。トリコスポロン以外にも、鳥のふんに含まれるタンパク質やキノコの胞子、ポリウレタンの原料(イソシアネート)なども原因になることがあります。冬場につかう加湿器のタンクの中で増えたカビも問題になる場合があります。

Q.どんな症状なら気をつけたほうがよいの?検査は?

主な症状は、発熱、せき、息切れです。症状が軽い場合は夏風邪と間違われることが多いため、なかなか気づかれない場合もあります。草ヶ谷医院は咳を得意とするクリニックですが、いろんな咳に対する治療を行ってもなかなか良くならないときに、この病気を疑って調べるとようやく診断がついたという経験もあります。
またおそらく、時期が変わってカビが少なくなってきたから自然によくなってしまうというケースになってしまっているかもしれません。基本的には、原因となるカビから逃げない限りよくならず、少しずつ悪化します。そのためひどく悪化する前に適切な対策が必要です。

肺の画像検査では、一般的によく行う胸部レントゲン検査では、こまかなすりガラス影は見落としてしまうことがありますが、CT検査なら見逃すことはありません。肺の中にたくさんの小さなアレルギー性肺炎による微細なすりガラス状の、粒のような影が見られます。呼吸器内科を得意とする医師が見れば画像から区別できます。長期間にわたりこの肺炎が続くと、肺が徐々にかたくなって線維化し、慢性的に息苦しさが続くような状態に陥ることもあります。

Q.どうやって注意すればよいの?

特に注意してほしい人は次の通りです。
築年数が古い木造住宅に住んでいる方:古い家は湿気がこもりやすく、カビが生えやすいです。築20年以上の木造住宅で、日当たりが悪い、風通しがよくないなんていうケースは注意が必要です。
風通しや日当たりが悪い部屋に住んでいる方:湿気がたまりやすく、カビが繁殖しやすいです。エアコンのフィルターや浴室の隅なども要注意です。
長時間そういった環境で過ごす方:家の中で長い時間を過ごす人は、カビにさらされる時間も長くなります。専業主婦や高齢者など、在宅時間が長い方は特に注意が必要です。

Q.じゃ、具体的にどうすればよいの?

対策としてはカビを取り除くことと、カビが生えにくい環境を作ることが大事です。具体的には次のような対策があります。

カビ取り:浴室や洗面所などにカビが生えている場合は、カビ取り剤を使って取り除き、水気を残さないようにしっかりと拭き取って乾燥させます。カビは湿気、水、温度、栄養、酸素の条件が揃うと繁殖が活発になるので、水気を取ることが非常に効果的です。
換気:部屋の風通しを良くするために、こまめに窓を開けて換気を行います。特に湿度が高い梅雨の時期には、定期的に換気を行うことが重要です。
除湿:湿度が高いとカビが生えやすいため、除湿機を使って室内の湿度を適切に保ちます。理想的な湿度は50%以下です。でもあんまり湿度を下げると、喉をいためたり皮膚が乾燥するのでご注意を。
掃除:家の中をこまめに掃除し、ホコリや汚れを取り除きます。特に古い木造住宅に住んでいる場合は、より慎重な掃除が必要です。カビはホコリや人の皮脂、フケなども栄養にするため、こまめな掃除が重要です。ペットを室内で飼っている方はさらに注意が必要です。
家電のメンテナンス:エアコンや除湿器などの家電も定期的に掃除し、カビの発生を防ぎます。フィルターの掃除や交換を忘れずに行いましょう。

これらの対策をしっかり行うことで、夏型過敏性肺臓炎の発症リスクを減らすことができます。気になる症状が長引く場合には、早めに医師の診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。健康な生活環境を維持するために、日々の生活にぜひご注意ください!

医療法人社団博雅会 草ヶ谷医院
院長 草ヶ谷英樹
https://kusagaya-clinic.com/

2003年に大学を卒業後、内科の中でもがん、アレルギー、感染症、自己免疫疾患、環境関連疾患など、非常に多彩な病気を診る必要がある呼吸器内科に強くひかれ、専門的に勉強を始めました。その後大学院で気道免疫の研究をすすめ学位を取得する中で、免疫反応やアレルギー疾患に興味をもち、現在はとくに気管支喘息やアレルギーなどを専門的に開業医として働いています。
小さい頃から甘やかされて育ち大きな挫折も無かったため、飄々と人生を渡っていく予定だったのが、32歳時に精巣癌で手術や体重が60kgから40kgまで減るような抗がん剤治療を受けた経験、37歳時に原因不明の顎関節症を患い、顎関節形成術,その後約半年に渡るリハビリテーションを行った経験を経て、医療は患者心理にもっと寄り添うべきだと感じるようになりました。
現在は患者さんも、医療者も幸せになるクリニックづくりを目指しています。

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