アトピーとの40年の闘いが導いた答え——「独自の入浴療法」とは
アトピー性皮膚炎に長年悩んできた人々にとって、症状の改善方法を模索することは切実な課題である。しかし、多くの方法が根本的な解決には至らず、効果を実感しにくいことも少なくない。そんな中、自身も40年以上アトピーに悩んできた樋口氏は、新たなアプローチを見出した。
「私は理学療法士として10年以上医療に携わってきましたが、自分自身のアトピーに対して効果的な方法を見つけられずにいました。病院での治療、ステロイド療法、民間療法など、あらゆる方法を試しましたが、なかなか改善が見られませんでした。しかし、病院の図書館で医学論文を調べる中で、アトピーの一因として『黄色ブドウ球菌』が関与しているという情報を発見したのです。」
この発見をもとに、樋口氏は黄色ブドウ球菌を減らすための方法を探求し、独自のケア法 入浴療法を考案。2020年から本格的に実践し、モニターを募って効果を検証してきた。現在、「黄色ブドウ球菌の増殖を抑えるこの入浴療法」は5年目を迎え、多くの人に試されている。
「2時間の入浴」と「4ヶ月の生活改善プログラム」——自主的なケアの新たな選択肢
樋口氏が考案した「 独自の入浴療法」は、単なる入浴習慣の見直しにとどまらない。4ヶ月間にわたるプログラムとして、入浴、運動、食事の3つの要素を取り入れている。
「最も重要なのは入浴です。特定の成分を含んだ入浴剤を使用し、最低2時間湯船に浸かることで、肌環境を整えることを目指します。モニター試験を行った結果、30分や1時間では十分な変化が得られず、2時間が適切な時間であることがわかりました。もちろん、3時間以上の入浴が可能な人にはさらなる変化が期待できるかもしれませんが、継続のしやすさを考慮し、2時間を推奨しています。」
さらに、運動も肌環境の改善をサポートする大切な要素の一つだ。
「アトピーの方は代謝が低下しがちで、体のバランスを整えることが求められます。1ヶ月目は軽い散歩を中心に、2ヶ月目以降は縄跳びやランニングを毎日20分程度取り入れるよう推奨しています。」
また、食事の見直しも重要なポイントとなる。
「特にお菓子や油分の多い食品は控えることを推奨しています。 入浴療法を受けている期間は、できるだけシンプルでバランスの取れた食事を心がけてもらうようアドバイスしています。」
海外からの注目とカンボジアでの挑戦

樋口氏の入浴療法は、国内にとどまらず海外からも注目を集めている。SNSを通じて、世界中の皮膚疾患に悩む人々から相談が寄せられるようになった。
「特にTikTokで英語の動画を発信し始めたことで、海外の方々から多くの問い合わせを受けるようになりました。昨年はカンボジアから直接SOSが届き、現地で実験的にこの方法を試す機会を得たのです。」
カンボジアでは、魚鱗癬(ぎょりんせん)や全身性エリテマトーデス(SLE)といった難治性皮膚疾患を抱える人々に対し、樋口氏のケア法が試された。その結果、4ヶ月で肌の状態が改善したケースが確認された。
「カンボジアでは、適切な治療を受ける環境が整っていないことが多く、浴槽や温水すら手に入りにくい状況でした。そこで私は、自ら浴槽を持ち込み、現地の方々と一緒に入浴環境を整えることから始めました。その結果、2人の重症患者が改善を実感し、今後さらに研究を進める必要性を感じています。黄色ブドウ球菌を減らすための素材はまだまだたくさんあります。現在、台湾の国立大学と共同研究を進めており、今後さらに多くの研究成果を活用していく予定です。最終的には、患者さんの負担をできる限り減らし、短期間で効果が実感できる方法を確立したいと考えています。」

■プロフィール
樋口 和気
理学療法士。自身も生まれつきのアトピーで、40年もの間苦しんだ経験をもつ。アトピーと黄色ブドウ球菌の関係性に着目し、ステロイドを使わない微生物治療を開始。世の中からアトピーを根絶するという情熱と使命感をもち、日々、アトピー患者と向き合っている。株式会社アドラボ0358
https://www.teatemainsdor.com/