Healthcare journal

2024.07.02 Tue
医療法人社団日進会 にっしん皮フ科・形成外科 http://www.nishicli.jp/

マダニに咬まれたらどうする?対策や対処法を皮膚科医が徹底解説

マダニの媒介による感染症が確認され、話題となっている昨今。治療薬も発表されるなど度々耳にするこの「マダニ」はいったい人間にどんな影響を及ぼすのか。また、対処や対策について、にっしん皮フ科・形成外科院長・平岩亮一さんにお話を伺いました。

―マダニに咬まれたときの症状について
先ず、マダニが皮膚につき咬まれ血を吸われていても痛み痒み等の症状はでません。吸血前のマダニの体長は長径3mm前後で、木の皮のような焦げ茶色、もしくは背中がオレンジ色で周囲の景色と色彩が同化しやすく、付着していても気付かないことの方が多いと思います。
ある程度吸血すると虫体が球状に大きく膨らみ、灰色からぶどう色、もしくは、黒いホクロが急に出現したかのような外観を呈し、「マダニに咬まれた!」「何か虫にさされた!」と気付くこととなります。
吸血部の周辺は3~5mm程度赤みとむくみがでますが無症状、もしくはごく鈍い痛みを感じます。マダニを媒介するSFTAウイルス(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)に罹患すると、5~14日の潜伏期間を経て、発熱を伴う風邪様症状を発症した後、重症化すると死に至る可能性があります。

―マダニはいつどこで発生しやすいか
マダニは、実はとても身近な場所におり、実家の裏庭、道路際の雑草地、公園の緑地、河川敷、墓地の草むら、非整備の山岳地(動物の通り道)、キャンプ場、渓流釣り場、雑草管理の滞った家庭菜園、場合により学校のビオトープでも発生する可能性があります。
マダニの発生時期は、3月から10月で、暖かい季節に発生しますが、12月頃でも発生が確認される例があります。温暖な気候の地域では1年中発生する可能性があります。犬を飼われている方はよくご存じかと思いますが、お散歩中に道端の茂みにワンちゃんが入ると、かなりの高頻度でマダニにつかれます。

―マダニに咬まれないために気をつけるべきこと
屋外では常に、マダニ等の吸血昆虫の被害に遭遇する可能性があります。周囲に目をやり、お肌に虫が付着していないか注意を払うのも大切です。
公園の地面に直に長時間座り続けず、寝転ぶのも控えましょう。レジャーシートの上に座るのは一定の予防とはなりますが、シート上にもマダニが上がってくる可能性があり、屋外での安易な長時間滞在には注意が必要です。
屋外では、アスファルト路面上を除き、半ズボンや素足にサンダルといった軽装を避けます。登山の経験から、しっかりした靴、足首の出ない長ズボンを着用されるか、半ズボンの場合は、少なくとも足首まで隠れるランニング用スパッツや厚手生地のクライミング用スパッツを着用しますが、これでもやや心配です。可能でしたら足首から膝下をヒル(蛭)やマムシから守れる登山・クライミング用の泥除け(トレッキングスパッツ)の着用もお勧めします。

―マダニに咬まれた際の対処法
付着しているだけの場合もあります。ダニを手でつかまず、強く『フー!』と息をかけて吹き飛ばします。吸血している場合は、無理に引き抜こうとすると、マダニの顎がちぎれて残ることもあります。
マダニの顎で皮膚を咬みちぎられた影響と、唾液毒素による影響に加え、異物性炎症により炎症が増大、長期化します。
マダニは呼吸の為の気道を持つため、中性洗剤をのせ、ラップで密閉し、四隅をテープ等で止めてマダニの呼吸を弱らせ、たまらず顔を出し顎部がでてきたところでティッシュやラップ等でつまんで摘出します。摘出が怖い場合は、そのままお近くの皮膚科を受診しましょう。

つかまえたダニは逃げないようラップ等で包み密閉して燃えるゴミに出すか、逃げないよう保管の上、皮膚科受診の際に医師にご供覧ください。
患部は、20秒以上十分に流水で濯ぎ、患部が衣類で摩擦を受け易いと感じる場合はガーゼと紙テープで軽く保護し、お近くの皮膚科を受診頂くとよいでしょう。毒素を絞り出そうとして患部の圧迫や揉むといった行為は炎症を増大させますのでお控えください。暖かい時期に咬まれますので、あまり密閉性の高いテープや被覆剤を用いると、かぶれの原因ともなりますのでご注意下さい。

―読者へのメッセージ
マダニ咬傷では、ブニヤウイルスフレボウイルス属ウイルス(SFTSウイルス)による重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)という重症例が報告されています。本ウイルスに感染してから発症までの潜伏期間は5から14日、発症時の症状は、ごくありふれた『ウイルス性のかぜ(風邪)』に似ており、発熱、体のだるさ、吐き気、腹痛、下痢といった消化器症状、筋肉や関節の痛みが初期症状となり、重症化すると、播種性血管内凝固症候群(DIC)や血球頓食症候群により多臓器不全に陥り、死亡例も報告されております。
マダニの咬傷による傷口の閉鎖は早いですが、マダニに咬まれたら、先ずはお近くの皮膚科を受診され、適切な治療をお受けになられた上で、2週間程度は1日2回(朝と夜)の検温を行い、上記にあげた症状が出現の際には、総合病院、もしくは救命救急体制の整った病院への受診、もしくは、診て頂いた皮膚科の先生に適切な医療機関をご紹介して頂くことをお勧めします。

医療法人社団日進会 にっしん皮フ科・形成外科
理事長・院長 平岩亮一

略歴:
埼玉医科大学医学部を卒業。同院形成外科医局在籍勤務。東京医科歯科大学皮膚科形成班に移籍。同院並びに一般病院等勤務。その後、都内美容外科勤務を経て平成17年5月医療法人社団日進会設立。にっしん皮フ科・形成外科開業。平成26年より「汗の痒みを如何に止めるか?」をテーマに「痒み防止剤」の開発に着手。「痒み防止剤」の開発により、「傷が治る過程の最適化」に気付き、「生体皮膜剤」や「粉末状痒み防止剤」など13件の国内外特許取得。現在に至る。
http://www.nishicli.jp/

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