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【実験調査】「風呂キャンセル」で皮膚バリア機能向上?
2024.08.21 Wed
にっしん皮フ科・形成外科 【実験調査】「風呂キャンセル」で皮膚バリア機能向上? https://nishicli.jp/

最近、「風呂キャンセル界隈」という言葉がネットでささやかれていますが、これは風呂をキャンセルする、つまり入浴しない(できない)ことが日常的に発生する人たちを表すネットスラングです。
今回は「人体の持つ本来の機能とは?」をテーマに、皮膚バリア機能を最大値にした時何が起こるのかを調査するため、2024年1月1日から、お風呂・シャワーレスで約8ヶ月過ごしてみました!
なお、この間、ウォーキングや草刈りなど汗だくの日々も過ごしました。頭皮のみ10日に一度洗面台でシャンプーを使用し、炊事は水だけを使用。油汚れはティッシュなどに一度吸わせ粗目スポンジとマイクロファイバーの2種類を使い水だけで落としています。手洗いも水だけで行い、診療中は手指のみたまにエタノールを使用しています。

画像は7月31日時点の足底の状態です。ウォーキングをするので少しかかとが角化していますが、靴下の黒い繊維が付着している程度の汚れです。
生体皮膜剤を全身に塗布したので、「汗と皮脂が乳化し臭いや痒みが出る」「皮脂のベタツキにより肌が気持ち悪い」などの問題点を低減しています。
「カビが生える」「細菌に感染しやすくなる」といった感染症の問題は、お風呂に入るかどうかに関わらず、以下のようなさまざまな条件によって引き起こされます。

1.毛包炎や汗疱などの皮膚炎によりバリア構造の一部が破綻し、真菌(カビ)の繁殖に適した条件が発生。
2.痛みを感じ始めた部位を触って刺激を与え、炎症増大を招いている。
3.手指や足趾間を日頃から良く洗い、指・趾間が白く浸軟しやすい状態でゴム手袋、ビニール手袋、安全靴などの着用時間が長い。
4.汗をかいた状態で衣類などにより皮面が摩擦を受け続けている。
5.濡れタオルで綺麗に拭いて垢を落としている。
6.抗生物質を長期内服・外用している。
7.ステロイド系外用剤で治療している。
8.弱アルカリ泉(温泉)に頻回に通う。

カンジダ真菌、白癬菌、マラセチア真菌などのカビは生活上の常在菌ですが、これらのカビが繁殖するということは皮膚バリアと常在細菌叢(皮膚フローラ)の状態が悪いことを意味します。角質のバリアに傷がなく厚みが十分で、十分な皮脂膜に覆われていれば、お風呂やシャワーなしでも皮面は弱酸性に保たれ、皮脂や角質片を栄養源とする常在細菌叢(皮膚フローラ)により真菌感染症は起こりません。むしろ、石鹸やボディーソープで皮脂膜を除去し、入浴で過保湿にする習慣は皮膚バリア層の厚みを減少させ、角質細胞間脂質と保湿因子のフィラグリンが抜け、皮脂欠乏と乾燥肌に陥り、皮膚のバリア機能を低下させる原因となります。
「皮脂なんて除去してもすぐに出てくる」と思われるかもしれませんが、皮脂が出ることと皮脂膜は全く異なります。これは、はちみつとハチの巣くらいの差があります。皮脂膜は安定した皮脂の層構造で幾層にも積み重ねられたバリアの一部です。一度除去してしまうと回復に時間がかかり、その間、汗や紫外線、刺激物の表皮内浸透を許し、皮膚が障害を受けやすくなります。

毎日お風呂に入って綺麗にしているつもり

水虫やカンジダ、癜風やマラセチア毛包炎なども「毎日綺麗に洗って風呂にも入っているのに感染した」と言われています。もし、入浴レスの状況を普段毎日入浴している方が何らかの理由で数週間入らなかったときに足白癬になったとしても、それは「入浴レスが原因で白癬に感染した」とは言えません。なぜなら、明らかに入浴してきた期間が長く、バリア機能を低下させ続けてきた条件下で汗疱などが発症した結果、白癬菌に感染したと評価されるべきだからです。肌を綺麗にしているという入浴習慣は、常時真菌や細菌感染のリスクを上げているのです。

さいごに

人の皮膚に本来備わっているバリア機能を理解することで、長期的には肌荒れや皮膚感染症を予防しやすい健康な皮膚を保つことが可能です。「風呂キャンセル」という言葉は一般的にはネガティブに捉えられがちですが、実は皮膚関連業界にとっては大きな進歩の可能性を秘めたポジティブな概念なのです。また、風呂に入ることが常識とされている考え方を見直すことで、災害時に貴重な水資源の節約にもつながります。新たな視点と感性を持つことが、産業の発展を促すのではないかと考えています。

にっしん皮フ科・形成外科
理事長 平岩 亮一
http://www.nishicli.jp/
※検証に使用した生体皮膜剤:栴檀海斗(第3類医薬品)

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