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脳のエネルギーと誹謗中傷の関係
2024.09.04 Wed
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会 脳のエネルギーと誹謗中傷の関係 https://in-ct.org/

スポーツ選手への誹謗中傷。それまで熱心に応援していた人が、負けた瞬間に手のひら返しをしたように誹謗中傷のコメントをすること。この件に関しては、【誹謗中傷はなぜ起きるのか?】の中でお伝えしました。ポイントは「思いやりを欠く正義感」でした。今回は「脳のエネルギー」という別の観点から考察します。

早速ここで、あるワークにお付き合いください。次のAとB、2つの言葉を、それぞれ呟いてみてください。そして、頭の中にイメージした場面や体が感じたことを比べてみましょう。
A「明日の試合、ミスしたくないな」
B「明日の試合、きっとうまくいく」

問題回避型と目的志向型の言葉遣い

AとBを比べた場合、一般的にAの場合はミスをする場面など、暗いイメージを連想し、体も硬くなる人が多いです。反対に、Bの場合はうまくいく場面を連想し、体も柔らかくなる人が多いです。Aを問題回避型、Bを目的志向型の言葉遣いといいます。
(1)問題回避型の言葉遣い
「ミスしたくない」という言い方。これは、「ミス」という起こり得る問題点を先に挙げ、「したくない」と否定する言い方で、問題回避型と呼ばれます。いくつか他の例を挙げてみます。
・不合格はダメです
・失敗してはいけません
・緊張したくない
不合格・失敗・緊張、どれも問題点になります。そして「ダメ・いけません・したくない」と否定します。このように、否定することで結果的に肯定的な意味を持つ言葉になります。しかし、冒頭のワークでも実感できたように、頭の中ではマイナスの場面を想像し、体は緊張を強いられます。
(2)目的志向型の言葉遣い
「うまくいく」という言い方。これは、「うまく」という望む場面を口にする言葉遣いで、目的志向型と呼ばれます。いくつか他の例を挙げてみます。
・合格したい
・成功しよう
・リラックスしよう
合格・成功・リラックス、これらは望ましい結果を表し、ゴールに向かって前進するための言葉です。ワークで体感できたように、体は柔らかくなり、リラックスできます。
(3)問題回避型は脳のエネルギーを低下させる
問題回避型は問題点を見つけやすいというメリットがありますが、目的を見失いやすいというデメリットもあります。一方、目的志向型はスピード感があるものの、注意点を見逃しやすくなるという短所もあります。どちらが良いとは一概に言えませんが、バランスをとることが重要です。
しかし、問題回避型には見落としてはいけない点があります。それは心身を緊張させるということです。「ミスしたらどうしよう」と問題回避型で考えると、ネガティブな場面が頭を巡り、体も緊張します。この緊張感は、交感神経が活発になり、エネルギーを過度に消費させます。

周囲の視線を過度に気にすること

脳のエネルギーを低下させるもう一つの要因は「周囲の視線」を過度に気にすることです。周囲の視線を意識しすぎると、心身が萎縮し、緊張を強いられます。これも交感神経が活発になる原因です。

脳のエネルギーの低下が招くこと

図1をご覧ください。脳のエネルギーが高い人(青丸)と低い人(赤丸)を比べたものです。これらの人が同じトラブルに遭遇した場合、どちらも同じようにダメージを受けますが、持ちこたえられるのは青丸の人です。
「心が折れる」とは、脳のエネルギーが低い人が折れやすいことを意味します。エネルギーが少ない人は不安を感じやすく、「キレやすい」「打たれ弱い」という特徴があります。誹謗中傷に関しては「キレやすい人」が加害者となり、「打たれ弱い人」が被害者になる傾向があります。

歪んだ正義感が引き起こす問題

脳のエネルギーを低下させる要因として、問題回避型の言葉遣いや周囲の視線を過度に気にすることが挙げられます。これがキレやすさとなり、誹謗中傷を引き起こします。
(1)問題回避型の言葉遣い
「××はダメ」「××をしてはいけない」という言葉遣いが問題回避型の特徴です。このような言葉遣いでは、どうしても「×」という問題点に意識が向き、結果的に相手の間違い探しとなりやすいです。間違い探しからは「相手を正す正義感」は生まれても、「思いやり」は生まれません。そして、思いやりが無い以上、「正すためには罰してもいい」となります。
(2)周囲の視線を過度に気にする
周囲の視線を過度に気にすると、自分の視点が欠けるため、相手を正しく把握できません。その結果、誹謗中傷につながる思い込みや妄想が生じやすくなります。また、自分を見てほしいという心理が働き、承認欲求が高まることもあります。これが「相手を叩く自分をヒーローとして見てほしい」という歪んだ正義感につながります。この場合加害者意識が薄いため、これでは誹謗中傷はなくならないでしょう。「いじめ」にも似た構図を見出すことができます。

さいごに

「思いやりに欠ける正義感」の主な要因として、問題回避型と周囲の視線を挙げました。この2つに共通するのは、「いま・ここ」に意識がない状態です。これは、マインドフルネスではない状態といえます。誹謗中傷の対策として、自分自身の心地よい感覚を取り戻し、相手をきちんと見ることが重要です。これも、マインドフルネスの実践の一部です。
誹謗中傷について、受ける側も与える側も「マインドフルネス」が重要な対策となります。次回の実践編では、このマインドフルネスの方法や「いま・ここ」についてさらに深く考えます。

NEXT・・・「誹謗中傷の対策」

〈執筆〉
一般社団法人インナークリエイティブセラピスト協会
代表理事 佐藤城人
https://in-ct.org/

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